素材原価が高価な場合がある
物量投入されている方が音が良いと、オーディオ機器やアクセサリの世界では一定の支持を得ていますが、物量投入とは量産品に比べて素材を肉厚に使ったり、板金ではない削り出しにしてみたり、導体に銅ではなく、金や銀などの貴金属を使ってみたり、少しでも物理的特性に優れた素材を使用することで、音質を向上させようとしているので、わずかな違いでも何倍も高価な素材を使うことがあります。
導体を銅ではなく銀にすると高価になるのはわかりやすいと思いますが、絶縁体なども結構価格が異なり、例えばテフロン(PTFE:ポリテトラフルオロエチレン)は、安価なポリ塩化ビニル(PVC)やポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などに比べて10倍のコストがかかるので、Nordostのケーブルなどがシンプルな見た目に反して高価なのは、こういった素材の違いが要因の一つになっています。
メーカーの中でも、ハイエンドモデルにはテフロンを使い、下位モデルにはポリプロピレンやポリエチレンを使うというのが一般的だと思いますが、そこを妥協無くテフロンを使うAcoustic Reviveのようなメーカーもあります。
そして素材が高価なだけではありません。ニッチな製品だからこその理由もあります。
売れる数が少ない
家電などの量産品に比べて、オーディオ機器やアクセサリは少ロット生産となります。作れる数が少ないと、製造にかかるコスト以外の開発費や宣伝費を回収するために1つあたりのコストが上がります。
開発費が仮に1億円かかったとしましょう。
10万台売れる見込みがあれば、それのコストは1/100,000に分けて回収できますので、1台当たり1000円です。これが量産品です。
逆に1,000台しか売れないのであれば、1/1,000が1つの商品の価格に反映され、1つあたりの開発費10万円が商品の価格に添加されます。これが高級オーディオ機器です。
いかに量産品がコストメリットが大きいかわかるでしょう?
メーカーが中小企業で体力がない
ケーブルを作る場合、一般の人が全く知らないのは「最小ロット数」の存在です。メーカーがケーブルを作る時に、例えば導体であるPC-TripleCに絶縁体のついたケーブルを、導体を製造している外部のメーカーに発注するとしましょう。
導体は1m単位で販売されているのではなく、1000mとか30kgとかのまとめ売りになります。1mの単価にすれば安価に見えても、実際に製造するときには数百本単位で売る見込みがなければ発注できません。
300本作って、50本しか売れなかったら、残り250本は不良在庫となってメーカーの倉庫に取り残され、コストも回収できないまま、追加で保管費用や管理費用が掛かって、長期間にわたって損失出してしまうので、そのリスクを常に考慮して製造する必要があります。