アイキューブド研究所S-Vision技術デモで試作UHDBDプレーヤーを体験レビュー

並べてみてみれば

写真なのでわかりづらい部分はありますが、並べてみてしまえば明るさという意味では最新HDRテレビ(右)の方が明るいのは確かです。

でも左側を単体で見た場合、SDRテレビだと断言できる人はなかなか居ないでしょうね。

比較対象となった右側のテレビとプレーヤーは普段私が使っているSONY BRAVIA KJ-75Z9Dと傾向としてはよく似ていて、それぞれの映像処理が働いていて、エッジの効いたHDRらしい映像になっています。

S-Vision試作機の再生をしているFUNAIのSDR液晶テレビは、Pure-Pathというテレビ側の映像処理を一切しない特別仕様で動作していて、プレーヤー側の処理を素のまま出力してくれるそうですが、両者の絵作りがまったく異なります。

S-Visionの作り出す映像(静止画)

なかなか写真にしてしまうと、体感の良さが伝わらないんですが、私が感じたS-Visionの特徴は以下のようなものです。

• どこを見ても焦点が合う感覚
• 空気が澄んでいるような見通しのよさ、空気感
• エッジが効いているわけでもないのに彫が深く、かつ丸みのある立体感
• 暗いとわかっているのに、明るいと錯覚する
• コントラスト比の幅が小さい(SDR)にもかかわらず黒つぶれしない
• 暗いのに輝きや煌きを感じる

S-Vision試作機とFUNAIのテレビから出力されるS-Visionの映像は、HDRテレビの映像と比較すると全体が青みがかっていて、明るさのピークだけ比較すればぎらつき感はありませんし、表現できる色の数は少なく感じ、色自体はのっぺりして見える部分が散見され、色域や色階調の表現は狭さを感じます。

でもS-Vision試作機の映像を見てしまうと、HDRテレビの映像が白くかすんでいるように感じてしまうのが不思議です。遠景になればなるほど、まるで空気が汚いスモッグがかかったようにもやっとしているのです。

誤解の無いように書いておきますが、HDRテレビの映像は綺麗ですよ。でもS-Visionと比較するとそう感じてしまうんです。人間が1点を見つめると周辺視野がぼやけるように、カメラで撮影した映像は周辺視野がぼやけていますが、HDRテレビの映像はそのままぼやけた映像を、S-Visionは光の表現を工夫することでメリハリのある映像に作り変えているということです。

また煌きや輝きというのは、滑らかな表面に光が集中して反射したものですが、HDR対応液晶テレビが作り出す、煌きや輝きはバックライトがカラーフィルタを照らすことで起こる、拡散と透過によって起こります。まるですりガラスに光を当てたときのような拡散した光です。だから光が溢れているような感覚になります。例えば砂浜の明るいところは明るいですが、煌かず白飛びします。

でもS-Vision試作機が作り出す光には、同じ動作原理でありながら、輝きや煌きを感じることができ、砂粒が輝き、海面の波しぶきが煌き、波が揺らめく凹凸を立体的に、しかも遠くまでぼやけずに遠近感を保ったまま、抜けるような夏の海を表現してくれています。これが錯覚だということはわかっているんですが、脳は騙されてしまう。なんだかとても悔しい。