フラットパネルスピーカーの記憶
Ultima C Vertical Twinを聞いていて、しばらくしてから昔、私がオーディオという趣味を始める前に、NECのパソコンについていたPK-SP300(定価14,800円)というフラットパネルスピーカーを使っていたことを思い出しました。
このスピーカーはAUTHENTIC社の技術を使ったスピーカーで、当時の記憶で音は決して良いものではありませんでしたが、音量を上げると膜がびりつくようなビビリが出るスピーカーです。このような平面振動板を使ったスピーカーは音量を上げるとビビッた音を出すイメージがあります。
例えば私が愛用しているスピーカーDALI Helicon800はリボントゥイーターを使っていて、動作原理は違いますが、調整を失敗すると嫌な高音が出ることがありますが、Ultima C Vertical Twinから出てきた音は、そのビビリそうなトランペットの音が破綻せず、トライアングルのような金属を叩く音、スティックを叩く堅い木の音などが、基音と余韻がとてもリアルに表現されていて、振動板のポテンシャルの高さに驚かされました。
修復には2年の歳月が…
このスピーカーの振動板は、購入した当初は状態が非常に悪くただのガラクタ同然だったそうです。特にエッジ部分のウレタンは相当傷んでいたようです。
現在のFAL社が販売している振動板ユニットと、Ultima C Vertical Twinの振動板は製造元が異なる((株)調所電器製の)ため、現行のFALのユニットを入れても同じ音にはならないそうで、振動板はそのまま使う必要があります。
振動板に傷をつけずに痛んだ部分と除去して、部品の交換など、FAL社に協力してもらって2年の歳月かけて以下のような気の遠くなるような処理を経て、鳴るようになったそうです。
- 既存ウレタンエッジ除去
- 人口革エクセーヌエッジ張替え交換
- ユニット各端子洗浄
- 既存SPターミナル除去
- SPターミナル交換
- 全ユニットギャップ調整
- 可変抵抗除去
- 固定抵抗に交換
- 既存配線除去
- 内部配線全交換
こういういわゆる「ガラクタ」をリストアするのがTheaterさんのオーディオの楽しみ方なので、普通のオーディオ愛好家より、スピーカーに対する理解も深いですし、何より直すためにFAL社へ直接修復を依頼する行動力と、2年もかける熱意はすばらしいです。
そのおかげでまだ不完全とはいえ、私はこのUltima C Vertical Twinを聞くことが出来たのですからとても幸運でした。
耳と脳に響く音
不完全といったのは、この出来上がった各ユニットの状態に非常にばらつきがあって、音を聞いて2~3分もするとまず右下の振動板が硬くて、特定の音でビビッていることがわかりました。
左上の音も控えめで左下と右上の振動板の状態がとても良いので、頭を左に傾けた状態で音像が定位するアンバランスな状態になっていることに気づき、それをTheaterさんに伝えると、左のユニットを上下入れ替える作業をし始めました。
そして左スピーカーの上下ユニットを入れ替えて、改めて音出しをすると、左右の上のユニットの音がそろって、頭を傾けずに聞くことが出来るようになりました。
少し音量を控えめにしてチェックしてみると、先ほどまでビビッて聞こえていた右下のユニットは今度は気配を消して、右下がすっぽり抜けたような音像に変わり、「┏」のようにスピーカーが鳴っているように聞こえます。人間の耳って面白い!(多分音量を上げると右下がビビる。)
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