エベレストの臨場感
さらにこのファントム・サラウンドバックを有効にした状態でデモディスクに収録されていたエベレストの位置シーンを試聴してみました。
シーンは主人公が山頂付近で人命救助をしている最中に、大きな嵐が迫ってくるシーンです。山に向かってトップが吹きすさび、躍動する黒い雲が雷の轟音とともに襲い掛かります。5.1.2chというシステムでありながら、部屋全体が暴風と雷鳴に包まれてすぐ近くに雷が落ちているようで、映像をより臨場感のあるシーンへと補強してくれます。
私はこのエベレストを自宅で4Kで視聴済みで、我が家は4.1.2chという今回の試聴構成に近いですが、後部上方の音のつながりは確かに我が家のシステムよりつながりが良いと言う印象を受けます。
私の環境は比較的音量を低めにして、迫り来るような音場ではなく、音場を広く保つのが好みなので、大きく傾向が異なりますが、試聴したシアタールームの方が容量が大きく、音量が大きかったこともあり、ファントム・サラウンドバックを有効にした場合の音場はとても密度が高く、つながりの良さは5.1.2chとは思えないものでした。全体のシステムの価格を考えるとよくできているシステムだと思います。
自室のホームシアターは狭い部屋なので、スピーカーなどの設置場所に制限があり、理想的な配置にはなっていませんので、どうしても音のつながりに「抜け」や「違和感」を感じる部分があります。試聴したSONYのシアタールームはレイアウトが綺麗で天井も高いので、この音のつながりを聞くと、私も自室のスピーカーレイアウトを見直そうかと考えてしまいますね。
トップミドルスピーカーのみの制約
いいことばかりを書くのもなんなので、少し残念に感じた部分も書いておこうと思いますが、STR-DN1080はエントリーモデルといってもいい価格なので、7ch分のアンプしか内蔵されていません。
ですから一般的に考えればスピーカーの構成は7.1chとして使うか、5.1.2chとして使うかの2通りとなります。ファントム・サラウンドバック機能がある以上、後者の5.1.2chで動作させて、7.1.2ch相当で使うと言うのがベストの使用方法でしょう。
しかし、トップスピーカーが2ch分しかないと言うのは、結構音場形成をする上で制約を受けるものです。Dolbyのデモディスクの中で、「Helicopter Demo」と「747 Takeoff」と言うものがあります。こちらのデモも聞かせていただきました。
「Helicopter Demo」はトップスピーカーのみを使って旋回する様子をテストするためのデモですが、トップスピーカーが2本しかない場合は左右を行き来するような表現にしかなりません。これは我が家でも2chしかないので似たような表現になります。
「747 Takeoff」は前方から後部上方に向かって頭の上を飛び立っていく様子を収録したものですが、後方へ抜けて行った後の遠ざかる感覚はファントム・サラウンドバックの効用もあってよく感じられますが、上部のサテライトスピーカー1ペアのみなので、前方から上部の移動感はあまり感じられません。我が家のシステムなら「747 Takeoff」ならもう少し上方の移動感、頭の上を通っているような感覚を感じられます。
2chしか設置できない場合、どうしても上方の音の移動において前後表現が難しくなると言う制約がありますが、ファントムでサラウンドバックが作れるなら、ファントムの技術をさらに技術を進めてファントム・サラウンドバックならぬファントム・トップリアのような表現ができるかもしれない、そうすれば、Dolby Atmosへの対応に幅が広がるだろうなと個人的には思いました。
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